コラム

家計相談Q&A (第59回)50代後半夫婦。住宅の名義を私にしたい。

※この原稿は、令和5年5月5日時点の税制・法律を基に作成しています。
Q:現在、土地・建物の名義は夫です。将来の事も考え妻である私の名義にしたいと思います。この場合の注意点を教えて下さい。更に築30年以上経っているので、出来れば生活に便利な土地に住み替えたいとも思っています。

A:Aさんの相談は1.今の家を妻名義にしたい 2.将来、妻名義で老後の家を建てたい、という2つの内容に分かれます。実は「1だけ」に対する回答と、「1と2」に対する回答は違ったものになります。

「1.妻名義にしたい」の背景には、財産(不動産)を私名義にしたいのと、将来の相続対策という2つの理由があると思います。自宅の名義を変えるだけなら贈与税の配偶者控除という制度が有ります。これは、通称「オシドリ贈与」と呼ばれ、婚姻期間20年以上の夫婦の間で居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除( 配偶者控除 )できる制度です。一方、それがもうひとつの理由の相続対策になるかと言うと疑問で、この制度を利用しても不動産取得税や登録免許税、登記申請費用が掛かります。本来、相続では配偶者には1億6千万円の控除があるので今回は夫名義のままでも相続税は発生しませんし相続時には不動産取得税も掛かりません。

「2.将来、妻名義で家を建てたい」という点については、オシドリ贈与の条文に「その後も引き続き住む見込みであること」という一文が有ることに注意が必要です。この点に付いて税務署に確認しましたら制度利用時点で具体的に住み替えに着手していなければ問題無いという回答でしたが、旧不動産の贈与より新住宅取得のための金銭の贈与という選択がベターです。なお、住宅取得資金の贈与税の非課税特例は、直系尊属からの贈与が要件ですので今回は該当しません。ご注意下さい。

そして何より新築の場合、老後に経済的な問題が無いかを将来家計簿で確認し、適正な住宅予算額を算出し住宅設計を行うことが全ての基本です。試算したところ建物予算は2,750万円までOKとなりましたので、これをベースにご希望の平屋の設計を行い、併せて税制の選択を慎重に行います。

※国税庁HP No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除

【アドバイス】
(1). 税制は自分に当てはめて具体的に。
(2). 間違った情報・誤解も多いので自分で調べます。
(3). 将来家計簿で将来の試算が全ての基本です。

家族構成:Aさん:56歳・会社員、夫:59歳・会社員、長男(社会人)。