コラム

家計相談Q&A ( 第33回 )退職金・個人年金は一時金・年金のどちらがお得?

※この原稿は、令和3年3月2日時点の税制・法律を基に作成しています。
Q:来年60歳で定年退職します。退職金や個人年金は一時金か年金か、或いは据え置くべきでしょうか?
住宅ローンの返済も有り、一時金で受け取って住宅ローンを一括で完済したい気もします。若い頃に契約した個人年金もあり据え置きなど受取時期でも悩んでいます。なお、給料は減りますが60歳以降も数年は雇用延長で働くことが出来る予定です。

A: 65歳まで働くため退職金を一括で受け取る必要がない、少しでも金額が多くなる受け取り方を選びたいという相談は多く有ります。一時金か年金かの判断は額面金額が多い方が得とは言い切れません。また退職金を一時金で受け取ると浪費してしまったり、慣れない無理な投資をするなど注意が必要です。これも良くある相談ですが、身に覚えは有りませんか?また、一時金受取では退職所得控除、年金受取では公的年金等控除などの違いも有ります。

退職金は、一時金であれば勤続年数38年では退職所得控除は2,060万円となります。更に課税対象も退職所得控除後の2分の1ですので、全額非課税で受け取ることができます。また分離課税のメリットも有ります。

同じく年金受取の場合は、額面金額は増えますが、一方、公的年金等控除の対象として60代前半は確定拠出年金、65歳以降は公的年金の支給が開始するため、雑所得が増えて税金・社会保険料の負担が重くなります。

しじみさんのケースでは、金額の少ない確定拠出年金( 企業型 )は、60代前半で年60万円の年金受取を選択します。これに対し年最低70万円が控除されます。70歳までの給与、確定拠出、個人年金も含めて受け取り額を比較した結果、額面では年金受取の方が約195万円多いものの、手取りでは一時金の方が逆に205万円多い結果となりました。

住宅ローンに付いては、退職金から500万円を使って期間短縮型で繰り上げ返済をすると、返済期間は5年短縮され65歳で完済できます。65歳以降の住宅ローンの負担がなくなり、ご夫婦の年金・奥様のパート収入が税金や社会保険料で目減りしたとしても、当面は老後資金を取り崩す必要はない様です。

【アドバイス】
①年金形式の方が額面では有利だが、税・社会保険料も含めた手取額で判断します。
②雇用延長の給与や個人年金収入も合わせた試算で手取額を計算します。
③直近だけでなく70歳以降の家計もイメージすることが大事です。

しじみさんの家計 / 出雲市在住
本人( 59 )会社員・妻( 54 )パート勤務。子供は既に独立。来年60歳で定年退職の予定。