コラム

家計相談Q&A ( 第76回 )定年直前の共働き夫婦と建て替え

※この原稿は、令和6年10月6日時点の税制・法律を基に作成しています。
Q:数ヵ月後に夫が定年退職します。今まで古い家で我慢してきましたが、これを機に家を建て替え理想の暮らしを実現したいと思います。私達の老後は勿論ですが、長男への資金援助、娘には別の形で資産を残したいなどに付いてもアドバイス下さい。

A:意外に60代での新築は多く、弊社でも今年3件目になります。老朽化やライフスタイルに合わない間取りの不満を老後に適した住みやすい家に建て直すことで解消します。

老後には、良い意味での3Kが必要です。まずは健康、2番目が心( 生きがい )、最後に経済( 足りるだけのお金で十分 )です。お金は最後ですがでも無いと困ります。これら老後の夢が詰まった将来家計簿を作成することが最初のステップになります。

建替えのポイント 若者が住みやすい家とシニアが快適に過ごせる家は違います。①余裕のある時間を快適に過ごせる空間造り、②家事や介護にはバリアフリー化、或いは移動距離を少なくした動線と間取り、③耐震性と断熱性能を高め老後の身体の安全・安心を実現する為の性能、④夫婦の寝室配置などが大事なポイントになります。更に広いバルコニーや植栽を減らし手間の掛からない外構プランなどもポイントになります。Aさんも亡くなった両親が大切にしていた庭木・庭石が名残惜しいとの事でしたが整備・移植することにします。

資金面のポイント 不動産を次の代へ遺す必要が有る場合、60歳代の新築では資金の大半は現金手配が原則になります。逆に一定の現金を残す必要が有る場合、一部住宅ローンで対処することになりますが、返済年数が20年以下や団信によっては加入出来ないなど制約があります。

今後の生活に不安が有るだけに老後資金も用意しておかなくてはなりません。Aさん夫妻は共に定年前後まで就労した場合、老齢年金受給額は年額370万円(月額31万円)になります。今後の給与と退職金は資産形成に回します。公的年金と個人年金に対し、基本は生活費を見直し年金内の支出で暮らすことが原則になります。資産管理の一例としては現在ある金融資産を用途別に分けて管理する方法があります。「使うお金(生活費1年分や車買換えなど)」は普通預金へ、「減らしたくないお金(次代への援助、医療介護、葬儀代など)」は投信、定期預金や一時払い保険へ、「運用するお金(株式投投資など)」は証券会社へ、年金の一部は「楽しみに使うお金」とし明確に区別し、お金の色分けで将来を具体的に考えます。生命保険に付いては、家族構成や資産状況から、必要保障額は大きくないと思われます。医療費に付いては、自家保険的に資金を用意していますので、無理な追加はせず、現在の保険にがん特約を付加して内容を充実させ、入院日額5000円のものをそのまま続けることにします。

お子様へ残す遺産に付いては、前出の資産配分が準備となりますが、特に娘様への配慮には遺言の作成をお勧めします。最後に体力・気力の充実した60代のうちに決断し、先を見据えた住み替えを成功させて下さい。

【アドバイス】
①お金には限界が有ります。その中で夢を予算化します。
②新築の間取は新たなライフスタイルをプランしていく気持ちが必要です。
③高齢者の保険は大抵現金で対応できます。無理な見直しは不要です

Aさんの状況 / 出雲市在住
Aさん(59歳・会社員)、夫(64歳メーカー勤務)来年定年退職、子ども2人は既に独立。