家計相談Q&A (第16回)マイホームとアパートの違いは?
2025年07月01日
※この原稿は、令和元年10月2日時点の税制・法律を基に作成しています。
Q:同い年の妻は、「30歳になったら家を建てたい」と言っています。私はアパートで良いと考えています。家を建てない不利益はどんな点でしょうか?
A:
持ち家のリスク
アパートと持ち家は、それぞれ長所・短所がありどちらが得か一概には言えません。持ち家の場合、一般的に今後保有する資産の大半が住宅(不動産)になります。転勤や収入減に対応し難く、自然災害の多い昨今ではリスク分散の視点からも十分とは言えません。また購入時に自己資金が大きく減ることや、固定資産税や修繕費など、今後の維持管理費用も掛かります。
賃貸住宅のリスク
一方、住宅を買わないリスクは主に2点あります。ひとつは持ち家の場合と比べ、老後資金を多めに準備する必要があることです。アキオさんの年齢で持ち家を買う場合、定年退職までに住宅ローンを完済すれば老後の負担は無くなりますが、アパートでは定年後も家賃を払い続ける必要があります。毎月の負担額が同じでも、住宅ローンを返済するより貯蓄する方が難しいと言われます。ローンの返済は精神的重圧も大きいですが、他の支出を抑えようとする節約意識も高まります。一方、貯蓄の場合は強制力がなく、家計管理はあまくなりがちです。私の相談経験でも、アパート暮らしの方が、基本生活費は約2割程度多目になっています。
もうひとつは生命保険の必要死亡保障額が膨らむ点です。必要死亡保障額は、家計を支える世帯主が死亡した際に遺族が生活に困らないために必要な金額と、預貯金や死亡退職金、遺族年金など今後遺族が受け取る金額の差です。不足額が生じると予想される場合は、生命保険でその額を補う必要があります。持ち家で住宅ローンを組む場合、万が一の際に住宅ローンが完済される団体信用生命保険に強制加入するので、別に生命保険で手当てすべき保障額は少なくなります。アキオさんが住宅を買う予定の30歳時点の試算では、一生アパートで過ごす場合と持ち家のケースを比較すると、保険料の差額は35年間で総額180万円になります。働き手に万一のことがある場合を考えると、計算上は持ち家の方が有利になるようです。なお、この様なコスト比較の質問はたびたび受けますが、別の捉え方として、どの様な住環境で子育てをしたいのかというライフデザインの面から考えることも大事だと思います。
【アドバイス】
①持ち家とアパート、どちらが得かは一概には言えない。
②老後資金、生命保険料の点からは持ち家の方が有利。
③損得とは別に、家族が今後どう暮らしたいかライフデザインからも考える。
アキオさんの家族構成/雲南市在住
アキオさん(29)民間企業、妻(29)パート勤務
子供は現在1人(女児4)だが2年後にもう1人希望。
年収:アキオさん378万円、妻120万円、一家の手取り419万円